新訂 孫子

文章は簡古で雅致がある。聞き覚えのある名言が全編に鏤められている。戦前の旧日本軍のように一億玉砕、本土決戦、生きて虜囚の辱めを受けず、特攻などと勇ましいスローガンを並べ立てたりはしない。古典とは思えないほどの洞察、透徹した計算に満ちており、実際の戦場から得たリアリズムに裏打ちされていることが読み手に伝わってくる。

善く戦う者は不敗の地に立ち、而して敵の敗を失わざるなり。是の故に勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。

彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず。

諸葛亮孔明もあらかじめ準備を整えてから敵を迎え撃っていた。戦う前に勝利を確信できなければ戦ってはならないのが孫子の兵法である。

新訂 孫子 (岩波文庫)

新訂 孫子 (岩波文庫)